真夏の残滓

Ace of Diamond

《20××.1.28 収録 読日タイタンズ 沢村選手インタビュー映像(非公開分)》

『沢村選手、一軍春季キャンプへの合流、おめでとうございます』
『ありがとうございます!』
『ここまでの道のりは如何でしたか?』
『んー、やっぱすげぇ選手は沢山いて、俺にはまだまだ足りないものが多いんだなって痛感する毎日っした』
『成る程。沢村選手はこの半年ほどストレートの球速を上げることと、バッティングに力を入れられていたようで……』
『あはは、いやぁ、御幸せ……さんの扱きはキツかったっす』
『沢村選手の頑張りを見て、刺激を受けている選手も沢山いたのではないでしょうか』
『そんな! 寧ろ刺激を受けてるのは俺の方っすよ!』
『調子乗んなよ、さーむらぁー!』
『うげっ! 鳴さんは黙っててつかぁさいっ!』
『相変わらず仲が良いですね』
『ただの後輩いじめっす』
『またまた……えー、そんな常に前だけを見ている熱い沢村選手ですが、偶に後ろを振り返ったりされることはありますか?』
『えー……、そうだな……プロの世界に飛び込んだのは、後悔はしてないんすけど……大学野球の方も経験しときゃよかったかなーっていうのは、偶に思いやすね』
『大学野球、ですか。それは何故……?』
『いっつも俺って、何かを追いかけてばっかで、ショトツモウシンってよく言われるんすけど、だから、あんま後ろを見るってことをしないんす。でも、それってほんと大切なことで……後ろを向いたら見えるじゃないですか、今まで走ってきた道のりとか、逆に俺を追ってきてくれてる奴の姿とか』
『追ってきてくれてる人、とは』
『んー、ははっ。まぁ、俺はそいつにすげぇ元気貰ってるし、大事にしたいって思ってて、でも上手く出来なくて……もしかしたら、あいつは俺と同じ場所に最短距離で来るのかも知んないけど、俺的には、俺が見れなかった景色をいっぱい見てきて欲しいなって、最近思うようになりやした。そんで、あいつがここまで来た時に、二人で見てきた景色を共有して、』
 ――最高のバッテリーに、
『……何となくどなたのことを仰っているのか、わかる気がします』
『え⁉  ︎うわ……それ超恥ずかしい奴じゃないっすか……この部分はカットでお願いしやす!』
『ふふ……では後で編集さんにお願いしましょう。それでは最後に、一軍キャンプへ参加するにあたり、抱負をお願いします』
『えーと、御幸……さんと鳴さんに負けないよう頑張りやす! 応援よろしくお願いしやす!』
『沢村選手、本日はありがとうございました!』


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